六郷用水跡 (ろくごう-ようすい-あと) 次大夫堀
多摩川から取水し、その左岸一帯を灌漑していた六郷用水。
江戸に入府した徳川家康が領内の耕作地を開発するために開削させたのがはじまり。
工事にあたった多摩川治水奉行・小泉次太夫吉次の名にちなんで次太夫堀とも呼ばれる。
六郷用水は慶長2(1597)年、家康の命を受けた代官小泉次大夫が開削を始め、14年かけて完成したといわれています。
多摩郡和泉村(現在の狛江市和泉)で多摩川から取水され、多摩川左岸の世田谷領・六郷領の水田を灌漑していました。
ちなみに多摩川右岸で同時に着工され、川崎領・稲毛領を灌漑したのが二ヶ領用水。これを六郷用水と合わせて四ヶ領用水と呼ばれることもあります。
六郷用水の上流部分はほとんど埋め立てられてしまいましたが、世田谷区内に残る滝下橋緑道は六郷用水跡が暗渠化されたもの。
現在の丸子川は、仙川から岐けられた支流となっていますが、これももともとは六郷用水の流路でした。
取水地周辺(狛江市)
多摩川の左岸、分水口のあったあたり。特に痕跡は残っていません。
遠くに見えるのは多摩水道橋。
水神社
近くに祀られている水神社。
バス停も、交差点も、この名前。
取水口について記した石碑。
玉翠園跡
取水口の近くに、この地で昭和14年まで営業していた料亭の石垣遺構が残っています。
その前身は明治39年に開墾された庭園「井上園」。
さらにそのそばで多摩川に合流しているのが、かつてハケの湧水を集めて流れていた根川。
左岸の田畑を潤してきた用水・道安堀もここで合流しています。
広大で舟遊びのできる多摩川、清冽な湧水の流れる根川、長い歴史のある六郷用水のスタート点。
ほぼ三方を水で囲まれていた玉翠園からは、水のパノラマを一望できたのでしょうね。
現在の合流はこうです。ちとさびしい。
六郷さくら通り (福祉会館通り)
この太い舗道が用水路の跡です。
狛江駅の北側を通過します。
小田急の高架をくぐります。
二ノ橋交差点(世田谷通り)
幅の広い舗道が続きます。
用水跡を整備した滝下橋緑道はこの近くから始まっています。
野川と“合流”
ここで、北(写真の右方向)から流れてきた野川(新水路)が合流しています。
野川は水路を大きく付け替えられており、旧野川、六郷用水、入間川の本来の姿は大きく変わってしまっています。
この近辺ではところどころに水路の痕跡が残っていますが、それがどの水路なのか、探ってみると面白いですよ。
これより下流は、旧野川=六郷用水 です。
次太夫堀公園
野川の右岸、喜多見3丁目にある次太夫堀公園・民家園。
園内には三棟の古民家が移築されているほか、水田、用水路まで再現されています。
民家内には民具や農具が置かれていますが、いわゆる博物館の匂いはありません。
徳川時代末期の生活が再現されています。
季節ごとに行われる行事も多く、武蔵野の香りを楽しむことができる小さな桃源郷といった趣き。
次大夫堀公園は、現在の野川から離れていますが、ここが本来の用水の跡です。
もともと六郷用水は、この一帯をゆるやかに蛇行していた野川の流路を利用しており、さらに水車や灌漑用の分用水が多く作られていました。
治水事業として水路が付け替えられ、現在のようにほぼまっすぐ流れる野川として生まれ変わりましたが、その両岸にはかつての用水の跡がところどころ残されています。
次太夫掘公園の近くに残る、用水跡の空堀。
大蔵5丁目
用水と新野川がここで左右に分かれます。
東名高速の付近、野川の左岸にかつての用水の跡が残っています。
高速の高架下(南側)には空堀が残っています。
コンクリート張りの形状から見て、昭和40年代まではなにかが流れていたようです。
少し先で暗渠になっていますが、現在は雨水もちゃんと流れるのか心配です。
水車用水路
この近くで小さな水路が分けられています。水は水車の動力源となったあと、近くを流れる野川に落ちていました。
水車橋。かつてこのあたりに水車があったようです。
鎌田4丁目の多摩堤通り。
バス停の足元の縁石に梅之橋の銘板が残っています。
いつごろまで水車が稼動していたのかわかりませんが、水路自体はかなり大きく、しっかり整備もされています。
遊歩道
整備された道が続きます。
旧仙川の合流
用水沿いに桜並木が続いています。
左岸に祀られている水神様。かつてこのあたりで仙川が合流していました。
用水がなくなった以降は、仙川の本流はそのまま南に貫流して野川に合流するようになりました。
六郷用水の下流部分には岡本3丁目先で湧いた水が流され、丸子川として流路が整備されています。
仙川沿いを
並行して走る細い水路。六郷用水を再生した丸子川です。
丸子川親水公園
少し下ると親水公園が作られています。
園内には六郷用水の由来を記した石碑があります。
この続きは、丸子川ページにまとめることにしましょう。
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