世田谷の川探検隊

三田用水跡 (みた-ようすい-あと)

笹塚付近で玉川上水から分水された三田上水は、江戸六上水のひとつ。
江戸城下南西部への給水道でした。
上水の役割を終えた以降は、三田用水として農業に、近代以降は工業にも活用されていました。

分水口跡


玉川上水の右岸、笹塚橋のやや下流に残る取水口跡。2003年5月撮影。


左は用水がまだ生きていた時代。昭和30年の撮影。
右の写真ではすでに水門は埋められています。(出典「多摩川誌」:財団法人河川環境管理財団・昭和61年)

北五商店街


北沢5丁目、略して北五商店街。
分水された上水はこの通り沿いに流れていた、と書かれているのをたまに見かけますが、実際は数メートル裏手を流れていたようです。


路地に入ってみても水路らしい痕跡はありません。
井戸を見つけましたが上水となにか関連があるでしょうか。‥‥どうでしょうね。


これが水路跡と思われる路地。北から流れてきた水路の一部が袋小路になって残っています。
2台のクルマ、そして物置の部分がおそらく水路。
さらに南を探すと、これと呼応する位置に残った袋小路が見つかります。

水路はこのあと北沢小学校の東側、小田急線東北沢駅付近を南下します。
古地図ではこのあたりを通っていたことになっており、ほぼそれに沿う道路があります。
このあたりにははっきりした痕跡は残されていませんが、あちこちで断片的な遺構を見ることができます。

小田急線 東北沢駅


2005年5月。東北沢駅の近くにあった建物が取り壊しになりました。
その結果むき出しになった三田用水の点検口。
道路から数メートル奥を流れていたことがわかります。
(正確には、水路に沿って道路が造られなかった、ということです)


2006年5月。角材のようなもので暫定的に蓋をされました。


2007年1月。仮設通路が造られ、新しいグレーの蓋が取り付けられました。

三角橋


水の匂いの残る交差点。その名も「三角橋(さんかくばし)」
写真の右方向が東北沢駅、左奥が松蔭学園(北沢1丁目)です。
ここから南西、現在の池ノ上駅方面に向かう流れがありました。北沢1丁目から代沢を経由する、北沢川 溝ヶ谷支流です。

また、このやや上流には東北の方角に下る谷筋があり、代々木上原駅方面に続いています。
渋谷区内を流れていた宇田川の源流のひとつ富ヶ谷支流です。


路傍に埋まったコンクリートの構造物。
埋められたあとの用水跡は、自然河川とはかなり違った痕跡を残します。


東京大学駒場キャンパス正門に残る、欄干状の物体。

 


建物の裏(もしくは下)を流れていた水路が道路のそばに出てきました。
通常の数倍の高さのある歩道。

とはいえこのまま続いていくわけでもありません。
本来の地形に対応してくねくねと流れていた用水路に対し、自動車中心の時代につくられた道路はほぼストレート。
水路は道路の脇を流れている、という先入観はこの際捨てましょう。

二ツ橋


ここにも水の匂いの残るバス停。「二ツ橋」

この付近から北東、富ヶ谷2丁目方面の谷へ流れ込む小流があったようです。
これは現在の代々木八幡駅付近で他のいくつかの流れと合流し、宇田川となっていました。


ここで水路は道路の反対側に移動。


この材木店の真下に水路の痕跡らしきものが見つかります。

山手通り


北西(写真では左)から来た三田用水が山手通りと出会う交差点。
山手通りでは高速道の工事が進行中。
この 撮影地点のすぐ背後に水路があったはずなのですが、特にその痕跡は残っていません。


9年経ってだいぶ様子が変わりましたが、まだ工事中です。


水路敷を利用した駐車場と細長いビル。

駒場東大の裏口


松濤2丁目、東京大学駒場キャンパス裏。
山手通りに沿って奇妙なコンクリートの構造物があります。


2000年6月に校門の工事でこの一部が取り壊されました。
中に隠されていたのはこんな水路でした。


やがてその末端はこのように塀の内側に消えていきます。

この部分の遺構は既に消失しました。

鍋島松涛公園


三田用水の流路の東にある庭園。古くからある池です。
明治後期には用水近くから出た流れがこの池に注ぎ、池から出た水は宇田川へ流れ込んでいました。

 


山手通りの裏。
馬の鞍状に盛り上がった細長い土地がさまざまに利用されています。

道路ではなく、これらの構造物の下が水路跡です。


井の頭線の線路が用水の下をくぐります。
トンネル入り口のほぼ直上が水路。


この横断歩道のほぼ真下が水路跡。
自然河川ではまずありえない場所です。

玉川通りと交差


さらに南下し、高架の向こうに続きます。

国道と首都高が上下に併走する大きな道路ですが、ここで左右を見るといずれも見事に下り坂。景観が激変した現在でも尾根の頂上です。最寄のバス停も 大坂上


車止めのある風景。
いつもの川跡探検だと、つい左の奥に向かって行ってしまうところです。(笑)


目黒川に向かって下りていく急坂。
そのぎりぎりのところに水路が造られていたことになります。

西郷山公園と西郷橋


奥に見えてきたのが山手通り。西郷山公園に到着しました。


そのそばにあるのが西郷橋です。

この橋は初め西郷隆盛の弟・従道の屋敷内を通る三田上水に架けられていた。
現在は環状6号線(旧山手通り)に架かる大橋で、 橋の下も道路。

  〜渋谷区教育委員会「渋谷の橋」

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